過払い金請求がブラックリストに載らなくなった?
平成22年4月19日の変更点
信用情報機関の一つである株式会社日本信用情報機構(JICC・http://www.jicc.co.jp/index.html)は、平成22年2月15日、「サービス情報71「契約見直し」の収集・提供の廃止に関するお知らせ」と題したニュースリリースを行いました。
このニュースリリースには次のようなことが書かれています。
- 平成22年4月19日より、「貸金業者が借主に対して過払い金を返還した場合には、JICCに対して『契約見直し』という報告をする」というルールを廃止すること。
- 平成22年4月19日より、貸金業者からの「契約見直し」報告を受け付けないこと。
- 平成22年4月19日の時点で既に登録されている「契約見直し」情報は全て削除すること。
これからの過払い金請求は100%安心?
JICCのニュースリリースを一見すると、「平成22年4月19日からは過払い金請求をしてもブラックリスト扱いにならない」ように思えます。
果たしてその通りでしょうか?
まずは、場合分けをして考えなければなりません。
完済し、解約まで終わっている場合の過払い金請求
平成22年4月18日以前であっても、完済し、解約まで済ませている場合の過払い金請求はブラックリスト扱いになっていませんでした。
当然ながら、これは平成22年4月19日以降も同様です。
完済しても解約していない場合の過払い金請求
「完済しても解約していない場合」の典型例は、「完済したけれども、また借りる予定があるので、カードを引き続き持っている」ような場合です。
この場合には消費者金融との契約がまだ残っておりますので、司法書士や弁護士から受任通知があった場合、一時的にであれ「債務整理」という情報が信用情報機関に登録されてしまう可能性があるようです。
完済しているなら、早めに解約の手続も済ませていただくのが最も安全です。
完済していない場合の過払い金請求
まず、完済していない場合の過払い金請求の流れは、通常は次のようになります。
- 司法書士や弁護士に依頼する。
- 司法書士や弁護士が貸金業者などに受任通知を送り、取引履歴の開示を求める。
- 開示された取引履歴を基に、過払い金の額を計算する。
- 貸金業者に過払い金を請求する。
- 貸金業者と和解し、和解書を取り交わす。
- 貸金業者から過払い金が返金される。
原則として、司法書士や弁護士が取引履歴の開示を求めた段階では、過払い金が発生しているかどうかが分かりません。
つまり、いずれ過払い金を返すことになるとしても、取引履歴開示の段階では、借主の手続が「過払い金請求」なのか「債務整理」なのかということは、貸金業者にも分かりません。
どちらになるかが分からなければ、貸金業者としても、JICCにどう報告して良いか分かりません。
ある貸金業者は「とりあえず様子見」と考えて何も報告しないかもしれませんが、ある貸金業者は司法書士や弁護士が受任した段階で「債務整理」と報告してしまうかもしれまん。
JICCは「債務整理」の情報を通常通り受け付けるはずですから、貸金業者が司法書士の受任の時点で「債務整理」という報告をしたなら、信用情報の中に債務整理の事実が記載されてしまいます。
もちろん、いずれ過払い金を返還した場合には「債務整理」登録を削除することになると思いますが、それでも過払い金返還までの数ケ月は、「債務整理」という登録がされ、ブラックリスト状態になってしまう可能性が否めません。
100%安心とは言い切れません
ここまでの説明でお分かりの通り、平成22年4月19日以降の過払い金請求だからと言って、絶対にブラックリスト扱いにならないと断言できるわけではありません。
実際、当事務所が数社の大手貸金業者に聞いたところ、「過払い金返還の和解をするまでは「債務整理」という登録をする」と回答したところもあります。
完済前の過払い金請求をされる場合には、ご注意ください。