過払い金に対する利息
過払い金に対する年5%の利息
昨今ではよく知られるようになりましたが、過払い金には年5%の利息が付加されます。
年5%というと僅かな金額のように思われますが、そんなことはありません。
例えば、過払い金の元本が100万円あるなら、1年あたり5万円の利息がつくことになります。
過払い金100万円が発生していることに気付かないまま5年経過したとすると、その間に25万円もの利息がついたことにあります。
なお、以前は過払い金に対する利息を年6%とする考え方もありましたが、最高裁判所が年5%が相当と明言しましたので、現在は年5%として扱われています。
過払い金に利息がつく理由
過払い金は、民法でいうところの「不当利得」に該当します。
そして民法704条は、「悪意の受益者は、その受けた利益(不当利得)に利息を付して返還しなければならない」旨を定めています。
悪意の受益者とは、「法律上の理由がないことを知っていながら、利益を得た者」のことを言います。
貸金業者は貸金のプロですから、利息制限法の制限利率(元本に応じて年15%~年20%)を超える利率による契約が超過部分において無効であり、一部の利息を受け取る権利がないことを当然に知っています。
それにも関わらず、貸金業者は受領権限のない利息を受け取り、これによって莫大な利益を得てきたのですから、まさに悪意の受益者であると言えます。
このような理由で、貸金業者に請求する過払い金には悪意の受益者としての利息が付加されることになります。
過払い金には絶対に利息が付くのか?
平成19年7月13日の最高裁判決は「貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の『悪意の受益者』であると推定されるものというべきである。」と判断しました。
つまり、貸金業者が次のいずれかの要件を満たさない限り、貸金業者は「悪意の受益者」として過払い金に年5%の利息を付加して返還しなければならないことを明言したのです。
- 貸金業法43条1項の適用があること(みなし弁済の適用があること)
- 貸金業者が、貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有しており、かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があること
上記判決が出た後しばらくの間は、貸金業者は当然に悪意の受益者であり、過払い金には当然利息が付加されるという考え方が主流になりました。
しかし、平成21年7月10日の最高裁判決によって、それまでの状況に変化が訪れます。
平成21年7月10日の最高裁判決は「期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を初めて否定した最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決の言渡し日以前にされた制限超過部分の支払いについて,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条の『悪意の受益者』と推定することはできない。」と判断しています。
簡単に申しますと、「貸金業者が利息制限法違反の金利を取得していただけでは、悪意の受益者にはならない」ということです。
また、同判決は、「制限超過部分の支払について,それ以外の同項(=貸金業法43条1項、みなし弁済規定)の適用要件の充足の有無,充足しない適用要件がある場合は,その適用要件との関係で貸金業者が悪意の受益者であると推定されるか否か等について検討しなければ,貸金業者が悪意の受益者であるか否かの判断ができない」とも述べています。
つまり、貸金業者が悪意の受益者であるかどうかを判断するには、その貸金業者がみなし弁済の適用要件を満たしていたかどうか等を検討しなければならないのです。
そして、これらの検討の結果、貸金業者が悪意の受益者ではない、つまり貸金業者は過払い金に利息を付ける必要がないと判断される可能性が出てきました。
したがいまして、過払い金に利息が付加されると断言することはできません。
過払い金に対する利息の問題は専門家へ
過払い金に対する利息の点は、簡単なようで難しい争点です。
相手の貸金業者によっても主張・立証の難易度が異なります。
詳細は司法書士や弁護士といった専門家にご相談されたほうが良いでしょう。
ただし、その場合でも、過払い金に対する利息まで全額回収できるとは断言できません(貸金業者が勝訴した判例も存在します)。
あまり過度な期待はなさらないようにしてください。